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廃棄物法令の最新改正を乗り切る

トムラのシニアバイスプレジデント兼トムラソーティングリサイクルの代表であるトム・エングが、欧州および全世界の廃棄物法令の最新の改正の概略について説明。こうした改正が廃棄物事業者に対して持つ意味を浮き彫りにします。

11 6月 2021

TOMRA_Tom Eng - SVP and Head of TOMRA Recycling

世界中の廃棄物およびリサイクルセクターには規則が厳密に適用されており、国際的な法令に加えて、ほとんどすべての国に、廃棄物事業者が遵守しなければならない独自の法令があります。廃棄物関係法令は私たちの業界の根幹であり、その変更はほぼ、地域、国、世界とそのレベルを問わず、リサイクルの品質や比率の向上を目指すものであることから、歓迎すべきものだと言えます。

ここでは、最近施行された重要な法令改正として、バーゼル条約のプラスチック廃棄物に関する改正、中国の固形廃棄物輸入禁止について概観し、さらに欧州グリーンディールにも簡単に触れたいと思います。

 

バーゼル条約のプラスチック廃棄物に関する改正

多くの国でプラスチックの回収とリサイクルのための手段と法令が徐々に整備されつつあるにもかかわらず、全世界で数百万トンにおよぶプラスチックについては、依然として埋め立てがその第1の選択肢です。2019年春に開催されたバーゼル会議において、各国政府はバーゼル条約を改正してプラスチック廃棄物に関する法的拘束の枠組みを加えることに同意しました。環境面で完全なリサイクル対象ではないプラスチック廃棄物の移動に新たな制限を加えるこの改正には、186か国が同意しました。なお、この新たな規制はアメリカ合衆国には適用されません。

この改正は、2021年1月1日に発効しました。リサイクル不可またはリサイクルが「困難」な無害のプラスチックは、今後、「特別な配慮」を要する廃棄物と分類され、その移動についてはバーゼル条約の事前の通知と同意の要件が適用されます。

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この改正の狙いは、リサイクルまたは廃棄対象のプラスチックくずおよび廃棄物の国際輸送を管理し、世界のプラスチック廃棄物取引をより透明で統制されたものにすることにあります。また、この法令には、リサイクルできないプラスチックをリサイクルできるプラスチックの積荷に「隠して」、このような資材を管理する術を持たない発展途上国に送ることを防止する意図もあります。歴史的には、発展途上国が利用可能なプラスチック資材を回収した後の残りを埋め立てに使うか、単に野外で焼却するということが行われてきました。

家庭廃棄物処理の流れの中に、この条約で有害廃棄物に分類されているプラスチックが入っているため、家庭廃棄物を処理する廃棄物事業者にもこの新条約が直接影響します。そのことから、事業者が、輸出国と輸入国両方の同意が必要な、資材を伴う混合家庭プラスチック廃棄物の輸出を行うには、詳細な事前の通知と同意(PIC)の手続きを遵守しなければならなくなります。

プラスチック廃棄物についての改正バーゼル条約が、現在プラスチック廃棄物の輸出市場に依存している廃棄物事業者に大きな影響を及ぼすことに疑問の余地はありません。事前に同意を得るプロセスにより、輸出まで最大数か月の遅れが出ることがあり、廃棄物事業者は事前の通知と同意(PIC)を得るまで待つ間、自社プラント内に莫大な廃棄物を保管しなければなりません。業者がこの要件を満たせない場合、廃棄物が輸出業者の費用負担で返送されることもあり得ます。運送中に留め置かれた場合、資材の出荷に遅れが出る場合もありますし、場合によっては、要件が遵守されないと、資材を受け取る国の管轄官庁から公的な措置を受けることもあり、それには金銭的な罰則が含まれることもあり得ます。

ほとんどの混合プラスチックに事前の通知と同意が必要ですが、一部に例外もあります。「グリーンリスト」廃棄物と呼ばれる廃棄物の場合、廃棄物事業者は事前の通知と同意なしに輸出を続けることが許可されます。グリーンリスト廃棄物には、リサイクル事業に向けたほとんど1種類のみのプラスチックからなるものと、分別リサイクル用のポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、およびポリエチレンテレフタレート(PET)混合廃棄物があります。これ以外のすべてのプラスチック廃棄物の輸出入には、移動前に輸出のための事前の通知と同意を得なければなりません。

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自動分別技術の長所を利用することで、PETとHDPEからポリプロピレン、ポリスチレン、そしてPVCに至る各種着色プラスチックおよび透明プラスチックのリサイクルにおいて、驚くべき純度を達成することが可能です。正しい法令、インフラ、そして正しい分別技術の組み合わせを実現することにより、以前であればあり得なかったような、シングルポリマーストリームで99.99%を越える純度の達成が可能です。

この種の資材は、事前の同意なく国際的な出荷が可能だというだけではなく、混合プラスチックよりもはるかに高い市場価格で売却できます。そのため、混合プラスチックを選別・分別してシングルストリームにすることには商業面と法令面で強みがあるのです。

 

中国の固体廃棄物輸入禁止決定

2021年初頭に施行されたもう一つの廃棄物関連法令は、中国の固体廃棄物輸入禁止で、これにはプラスチック、紙製品、繊維が含まれます。中国は、過去40年間こうした資材の重要な最終廃棄地でしたが、2013年にはすでに輸入回収物を規制する政策を開始しており、固形廃棄物の輸入を禁ずるこの最新の決定は、国内資材のリサイクル促進と国家の輸入依存度の抑制に対する中国政府の強い決意を反映したものです。

中国の固形廃棄物輸入禁止は、これまで資材の最終廃棄地としての中国に依存していた廃棄物事業者に後々まで尾を引く結果をもたらすでしょう。この最新の動きは、マレーシア、タイ、インドなど、プラスチック廃棄物の輸入禁止に乗り出した国の後に続くものであり、一部の国では混合紙廃棄物の輸入も禁じています。

改正バーゼル条約のプラスチック廃棄物の場合と同様に、中国の固形廃棄物輸入禁止に違反した場合、廃棄物輸送業者および輸入業者の両方に、50万人民元(約71,000米ドル)から500万人民元(約710,000米ドル)もの巨額の罰金が科されます。また、税関当局は固形廃棄物を廃棄のため輸出地に戻すよう命ずることになります。これまで資材の廃棄地として中国やその他の輸入禁止導入国に依存してきた廃棄物事業者は、固形廃棄物の新たな廃棄先を見出すか、中国が固形廃棄物の輸入許可証発行に必要としている極めて高い純度を達成するために分別技術に投資するかの岐路に立たされています。

中国は、かつて、世界最大の紙廃棄物輸入市場でしたが、現在は、純度レベル99.5%以上の紙廃棄物にのみ輸入許可証を発行しています。これは、中国に紙廃棄物を引き続き輸出したいと希望する事業者は、分別、インク抜き、リサイクルの努力を強化し投資をしなければならないということを意味しています。

これは、紙と紙以外を分別し、さらには、段ボール、印刷済みカートン、プラスチックコートカートン、染色紙、新聞紙、4色(CMYK)印刷紙などの各種グレードの紙を高い純度で分別する、光学分別の紙リサイクル技術の最新成果をフル活用することで達成できます。光学分別により、廃棄物事業者は中国への輸出を継続できますし、好みに応じて国内外の別の廃棄先に売り込んで、高い純度レベルに応じた高価格で取り引きすることもできます。

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欧州グリーンディール

中国の固形廃棄物輸入禁止と時を同じくして、ヨーロッパでは、未分別のプラスチック廃棄物を他国に出荷することを禁止する新しいEU出荷規則を導入して、プラスチック汚染の問題に取り組む新たな一歩を踏み出しています。

欧州委員会が2021年1月1日付けで施行した欧州グリーンディールは、プラスチック廃棄物の輸出、輸入、およびEU域内の輸送についての新たなルールです。このルールでは、リサイクルのため送られる「クリーンな」プラスチック以外のEUからOECD非加盟国への輸出を禁じています。

改正バーゼル条約のプラスチック廃棄物修正および中国の固形廃棄物輸入禁止と同様に、こうした厳しい規制は、廃棄物事業者はもはや高純度シングルストリームのプラスチック分別物でない限り、容易に輸出することができないということを意味しています。したがって、繰り返しになりますが、新しい規則で必要とされる、他の分別技術では達成不可能な高い純度レベルを廃棄物事業者が達成できるようにするために、光学分別技術が役立つのです。

 

変化する法令から見えてくるもの

本項で概観した規則は、廃棄物事業者に直接影響を及ぼす最新の変化のごく一部にすぎません。2011年中にEUの全加盟国に適用される予定の次の法令は、単一用途プラスチックの禁止です。 全世界にお客様を持つTOMRA Sortingは、国内外のあらゆる法令の改正を積極的に監視しています。そして、改正が明らかになり次第、お客様にサポートを提供できる態勢を整えております。導入される改正について最新情報を得ることで、技術とプロセスを目的にしっかりとフィットさせ、将来も有効に使い続けられるようにし、さらに最重要なこととして、厳しさを増す国際市場の競争環境におけるお客様の成長を可能にしています。